新ブログ「べっぷ移住物語」

佐賀県

おそるべき酒蔵、嬉野温泉「井手酒造」

2015/09/05

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九州ドライブ二日目、武雄温泉で一泊した私たちは、嬉野温泉を目指して走っています。

武雄温泉から嬉野温泉までは車で20分ほど

只今朝の8時過ぎ。嬉野温泉は武雄温泉から20分ほどですが、こんなに早い時間から日帰りを受け付けているところが嬉野温泉に果たしてあるのでしょうか?

国道から温泉街に向かって道を逸れ、橋を渡ると気が付けば車は高級住宅街の中へ。

嬉野温泉は高級住宅街の中にある

あれ?温泉街から外れてない?さらに進むと、川沿いに建つ大きなホテルの前に出ました。対岸を眺めると、どう考えても栄えているのは向こうの方。

温泉街の顔がこれでいいのか?観光客には微妙な「シーボルトの湯」

対岸に引き返すための道を探していると、住宅街の入口に【シーボルトの湯 →】と書かれた看板が立っているが目につきました。おお、そういや嬉野温泉の日帰り温泉でそんなとこあるって聞いたことあるな。

案内に従って角を曲がると、そこは入り組んだ住宅街の中。こんなとこ観光客の車がバンバン通ったら危ないような…

住宅街の中に異質な建物が

100メートルほど進むと、住宅街の中に異質なほどの鮮やかな極彩色の建物が建っていました。

川沿いに建つシーボルトの湯

シーボルトの湯は、元は「古湯温泉」という名前の公衆浴場でしたが、1996年に建物の老朽化などの理由で閉鎖。その後今のシーボルトの湯として再建されました。

白い外壁にオレンジ色のとんがり屋根が印象的な建物は、一見メガネの三城みたいなハリボテチックな印象も受けますが、元あった古湯温泉の外観がほぼそのまま再現されています。

内部は、古い建物の雰囲気を残しつつ、白を基調とした爽やかな色合いで統一されていて、吹き抜けになったロビーは開放感があり明るい雰囲気。

シーボルトの湯エントランスロビー

営業時間は午前6時~午後10時。平日の朝ということもあってか、入浴客はまだまばらです。

館内には男女別の大浴場の他にも休憩室と、貸切風呂が5つもあります。今回はさっとひとっ風呂浴びて立ち去るつもりなので、大浴場のチケットのみを購入しました。大浴場は大人一般400円。券売機で購入したチケットを施設の人に手渡して、ロビーの脇の通路を奥に進むと、男女の浴室の入り口が見えました。

生憎、女湯の方には先客がおられたのでお風呂の写真はありませんが、大浴場はエントランスなどと同様内装が白で統一されて、さらに壁面の一面に窓が取られているため明るく清潔感があります。四角い湯船は、5人ほど入れる大きさの物が二つ並んで設置されていますが、それぞれに湯温などの大きな違いは感じられませんでした。カランはシャワー完備、洗い場もロビー同様バリアフリー化されていて、子供からお年寄りまで使いやすいよう配慮された構造になっています。

しかし言い方を変えれば、公民館とか市民ホールみたいな、いかにも行政が杓子定規で作りましたというデザインで、温泉情緒などは一切感じられません。

それでも、お風呂が新しくなって地元の人が使いやすくなってるんなら、一見のよそ者がとやかく言うようなことでは無いのかもしれませんが、朝6時から地元ナンバーの車で駐車場がいっぱいの武雄温泉に比べて、シーボルトの湯の方はあまりにも寂しい客の入りのように見えます。

嬉野温泉のお湯は、武雄温泉と似た感じのトロッとしたアルカリ単純泉。しかし、嬉野温泉の方がややあっさりした湯ざわりのせいか、湯船に浸かるとほのかに感じるカルキ臭。

以前行った道後温泉本館も、温泉自体はかなり微妙でしたが、文化財の浴室や建物の内部を見に行くだけでも入浴料を払うだけの価値はありました。しかしシーボルトの湯は、お湯も内装も全てが微妙なので、もし泊まりで嬉野温泉を訪れることがあっても、わざわざ別料金払って入りに行く価値があるかはかなり微妙。個人的には、玄関先で記念撮影ぐらいでいいと思います。

褒章に映画出演…小さいけど実は凄い「井手酒造」

風呂上がり、ちょっと涼んで行こうとシーボルトの湯の真ん前の川沿いに下りていくと、対岸に洋館だか何だかよくわからないけど、とてつもなく古い建物が見えます。

何?何?「郷土の酒 虎之児 井手酒造」?おおっ!何と酒造会社の建物とは。ひょっとしたら資料館として内部を公開していたりするかも知れません。これは是非とも行ってみねば。

川沿いから見た井手酒造

井手酒造の建物正面に回ってみると、裏にあんなに古い洋館が隠れているとは想像も付かないような、至って普通の酒蔵でした。

井手酒造正面

玄関先には小さな売店が併設されていて、私たちが訪れた時はちょうど開店準備中でした。表で水を撒く従業員の女性に、裏の洋館を見学させてほしいとお願いしたところ、見学には事前予約が必要なんだそうな。
しかも、「酒造りは冬場がメインだから、今見学しても樽がいっぱい並んでるだけで酒造の工程とか何も見れませんよ」とのこと。

えぇ~、そうなの?また来ますったって、東京からじゃ今度いつ来れるか分かんないし…

すると、ちょっと可哀想だと思われたのか、「じゃあ今回だけ…」と、特別に蔵の中を案内して頂けることになりました!やったー!言ってみるもんだね。

井手酒造を見学させていただけることに

売店のある建物の奥に進むと、不思議な形の大きな装置があちこちに。

ホーロー製のタンクが並んだ酒蔵。入り口に、どこかの民族のお面みたいなのがいくつかぶら下がっていますが、ご察しの通りこれは使用済みの杉玉をリサイクルして作られています。

杉玉をリサイクルしたオブジェ

「職人さんはみんな手先が器用だから、ちゃちゃっとこういうのを作ってくれるんです」と、案内して下さっている年配の女性。

ひょっとして、社長さん?

酒造の工程は税金との戦い

更に奥に進みます。これでも井手酒造は佐賀の酒造メーカーでは小さい方なので、大きいとこ行くともっと大きなタンクが大量に並んでるそう。

タンクが並ぶ酒蔵の中

このタンクに引っ掛けてあるトンボのような木の道具は、タンクの中の酒の量を測る道具。

酒造の工程は

御存知の通り、酒には税金がかかります。酒造の工程は、単に原料から酒を醸造することだけではなく、税金をきっちり納めるためのあれこれもかなりの割合を占めており、年に一度税務署の人立ち会いのもと、このトンボのような装置を使ってそれぞれのタンクに入った酒の量を測って、納める税金の額を決めています。

酒造は税金との戦い

タンクに記されたナンバーは、税務署に割り振られたIDのような番号なんだそうです。

タンクに書かれたナンバーは税務署に割り振られた番号

タンクとタンクの間に、見過ごしてしまいそうな小さな部屋が。入り口には「検査室」と書かれた木札が下がっています。

タンクの隙間にある検査室入り口

検査室はどこの酒蔵にも必ずある研究室のような部屋で、酒の醸造中は毎日杜氏の方々がここで酒の成分なんかを調べて、「今年の米は天候不良でいつもの味にまで持っていくのが大変だ」とかそんなことを言いながらデータを取ったり、製造工程を吟味したりされているそうです。

検査室内部

室内には、理科の実験室にありそうなフラスコがたくさん並んでいます。これらは今でも現役で使われている検査用具です。

今も現役で使われている検査用具

検査室を出てさらに蔵の中を移動。こちらは瓶にラベルを貼る機械で、年配の男性が一人で作業をされていました。井手酒造は生産量がそれほど多くないので、ラベル貼りも半手作業です。

ラベル貼りは半手作業

洋館の中は想像を超えた超豪邸!何と菊の御紋の勲章まで!

さらに蔵の中を進むと、タンクの隙間にまたもや木製の扉が。しかしこちらは先ほどの研究室のような小部屋ではなく、普通の住宅の玄関のようです。蔵の中にあるのに、扉の上には瓦のひさしまで付いています。

玄関を上がるとその奥には、畳の六畳間が二間続きになった立派な応接間が。

井手酒造居間1
井手酒造居間2

和室の隣には、これまた古そうな洋室も併設されています。

床の間には、井手酒造の主力商品の名前である「虎之児」と書かれた掛け軸が。

床の間に飾られた虎之児の掛け軸

さらに床の間の脇の鴨居を見ると、何やら賞状が額装されていますが、これは菊の御紋のように見えますがまさかまさか??

日本国天皇は、井手洋子に多年保護司としてよく更生保護事業に寄与したことについて藍綬褒章を授与する

内閣総理大臣 小泉純一郎

すげぇぇぇ!!!マジか?ただの小さな酒蔵だと思ってたら、何と褒章まで貰ってるとは!!

賞状の反対側の壁にも、書や油絵なんかが飾られています。きっとこれもすごい人が書いてるんでしょうね~、名前読めないけど。

ちなみに、書に書かれている文字は「虎従風」(風は虎に従う)。これも主力商品の虎之児にちなんでおり、意味は「優れた人物のもとには自然と有能な人材が集まる」みたいな意味だそう。毎回見学の人になんて書いてるか聞かれるので下に書いて貼ってあるんです、とおっしゃっていました

つややかに磨き上げられた縁側の床板は、何と一枚板!!天井の梁も一本梁です。対岸から見た時もすごいお屋敷だとは思ったけど、実際見てみると想像以上に凄いな…

縁側の床板は一枚板!

縁側からは嬉野川にかかる赤い欄干の橋越しに、温泉街が一望。女将さんによると、春先は街中が桜の花で覆われて、ここからの眺めはそれはもうえもいわれぬ美しさなんだとか。さらに町の桜が散った後も、桜前線が徐々に山の方に上がって行く様子がここから眺められ、かなり長い期間違った形でのお花見が楽しめるんだそうです。

庭に出ると先ほどのシーボルトの湯がギリギリ見えます。下手なホテルより景色いいんじゃないの。

庭からシーボルトの湯を望む

地下にも何やらあるそうなんで、見ていいですよ、とのこと。おかみさんは降りるのがしんどいのか、上で待っておられました。

たくさんプレゼントされた虎のぬいぐるみ

階段脇には虎のぬいぐるみがたくさん。やはりあちこちからこういうグッズを頂いてしまうそうです。

地下にも何やらあるらしい

階下には扉が幾つか並んでいて、日の差し込む明るい一室の扉を開けるとそこは…

何とお風呂!!昨夜見た武雄温泉の資料館にあったお風呂に匹敵するような年季の入りようです。

井手酒造の地下には立派なお風呂がある
井手酒造地下のお風呂

川沿いは一面が窓になっていて、明るく見晴らしも抜群。もう今は使われていないそうですが、在りし日はやはり温泉が引かれていたのでしょうか。

井手酒造お風呂からの眺め

と、まぁこんな感じで洋館の中も見させて頂き、酒蔵見学は終了。いきなり来てしまって大変お手間をとらせた上に、丁寧な解説付きでご案内下さりありがとうございました。

井手酒造と「はやぶさ」の知られざる関係

せっかくなので、酒蔵の玄関先にある売店でおみやげを買っていくことにしましょう。

井手酒造小売部

それにしても、売店や玄関先のあちこちに、なぜか渡辺謙主演の映画「はやぶさ ~遙かなる帰還~」のポスターが貼られているのが気になります。

いたるところに貼られたはやぶさのポスター

これは実際の小惑星探査機はやぶさの性能計算書の表紙に、井手酒造の虎之児のラベルが貼られており、映画でもそれが再現されているからなんだそうな。

性能計算書

画像はISAS|日本の宇宙開発の歴史 より。三冊ある冊子の中央が虎之児があしらわれた性能計算書。

でも、何で人工衛星の性能計算書の表紙が酒のパッケージ?

人工衛星の性能計算書の表紙に酒のラベルがデザインされるようになった訳

日本では、代々人工衛星の性能計算書に洒落の効いたプロジェクトネーム?みたいなのを付ける風習がありました。

“Hatellite?”表紙

例えば、日本最初の人工衛星L-4Sの第一号機の性能計算書の表紙のタイトルは、Satellite(人工衛星)の綴りをもじって“Hatellite?”。これは日本語の「ハテ?」の意味を込めたネーミングだったそうなのですが、この後L-4Sロケットはまさにハテ(果て)の見えないような大苦戦を強いられます。一、二、三、四号機とことごとく失敗に終わったL-4Sシリーズは、五号機でようやく成功を納めますが、その時の性能計算書のタイトルは、Hatelliteをさらにもじった“hi-lite”。当時最も売れていたタバコの名前でした。

hi-lite表紙

この出来事以来、性能計算書のタイトルはミッション自体の命運を左右するものとして、縁起を担いだ名前や研究者の意気込みを込めた名前が付けられるようになり、1976年以降は酒や煙草の銘柄をもじったネーミングに統一されます。

例えば、セブンスターをもじった“Seventh Star”や、ハレー彗星探査機PLANET-Aにおいては、彗星の核心を目指すという意味から彗心とネーミングされ、表紙には広島の銘酒「酔心」のラベルを加工したものが貼られました。

はやぶさの性能計算書の表紙に井手酒造の虎之児が使われた理由は、地球重力圏外を漂う小惑星イトカワの表面の土を持って帰ってくるという非常に困難なミッションが、研究者にとってはまさに「虎穴に入って虎児を持ってくる」ような心境だったからだといいます。

性能計算書になった虎之児

画像・エピソード共にISAS|日本の宇宙開発の歴史 より。

この話は、映画を見てれば端的に説明されてるのかも知れません。されてないかも??見てないんで不明です。そのうち見ます。それにしても、資料に酒や煙草の名前を付けるなんて、いかにも一昔前の男社会って感じですね。無事ミッションをクリアした暁に美味しいお酒を飲むぞ!という思いも、おそらくあったのでしょう。


売店には、はやぶさだけでなく虎といえばあの!野球チームのグッズもあります。そりゃあるよね…

何と売店では試飲もできちゃいます。ツレは運転があるので私一人でいただいちゃいますよ、ど~もすいませんねぇ。エヘヘ…

左から、虎之児純米酒・うれしの古湯(純米酒)・ほろほろに(純米大吟醸)・虎之児しぼりたて原酒・虎之児原酒。さらに非売品の虎之児で漬けた梅酒も試飲させて頂きました。

飲み比べてみて、圧倒的な個性を放っていたのが限定酒の虎之児しぼりたて原酒です。オンザロックでもいけるぐらいのコク、フルーティな後味、甘口ながら非常にスッキリしており食事にも合いそうです。

日本酒って、口に入れた時にアルコール臭さがムワッと来る物がありますが、これはそういうの一切ないので、日本酒苦手な人でも大丈夫。カクテルとか甘いお酒が好きな人にもオススメです。

という訳で、嬉野温泉のおみやは虎之児しぼりたて原酒に決定!東京での楽しみがまた一つ増えました。画像は自宅で撮影しましたが、すでに結構飲んじゃってますね…

ではではこれから、長崎県の佐世保を目指して出発~!そういやまだ朝ごはん食べてなかったな。

・・・つづく

嬉野温泉 井手酒造へのアクセス

住所:佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙806−1

Tel:0954-43-0001

URL:http://toranoko.co.jp

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